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幹細胞とは

幹細胞
幹細胞は皮膚や血液など絶えず細胞が入れ替わる組織を保持するために、新しい細胞を再び産生して補充する能力を持ちます。具体的には以下の2つの能力を持っています。


①皮膚、血液、神経、血管、骨、筋肉など細胞を作り出す能力 (分化能)

②自らと同じ能力を持つ細胞に分裂することができる能力 (自己複製能)
様々な種類の幹細胞
幹細胞は二分される
① 多能性幹細胞  Pluripotent Stem Cell

・体のどのような細胞でも作り出すことのできる細胞
・様々な組織幹細胞も作り出すことができる
   ES細胞(胚性幹細胞)
   iPS細胞(induced Pluripotent Stem Cell)



② 組織幹細胞

・皮膚や血液などの決められた組織や臓器において
  -消失した細胞を補う新たな細胞を造り続ける細胞
・再生できる細胞は限定的
  -造血幹細胞であれば血液系の細胞のみ
  -神経幹細胞であれば神経系の細胞のみ
多能性幹細胞の種類
ES細胞(胚性幹細胞:Embryonic Stem Cell)

 胚は、受精卵が数回分裂し、100個ほどの細胞のかたまりとなったもの。この胚の内側にある細胞を取り出して、培養したものがES細胞。
 ES細胞は他人の受精卵から作られた細胞であるため移植すると拒絶反応が生じる問題があります。また、生命の源である胚を壊して作ることに倫理的問題があると指摘する方もおられます。



ntES細胞 (nuclear transfer Embryonic Stem Cell)

 受精前の卵子から核を取り出し、皮膚など他の体細胞の核を移植して胚(クローン胚)を作り、 胚の内側の細胞を取り出して培養したものがntES細胞。
 ntES細胞は、患者自身の体細胞の核を持つため、拒絶反応はおきないと考えられています。ただし、卵子の提供を必要とするという問題はあります。



iPS細胞(人工多能性幹細胞:induced Pluripotent Stem Cell)

 皮膚など体のなかにある細胞にリプログラミング因子と呼ばれている特定の因子群を導入すると 細胞がES細胞と同じくらい若返り、多能性を持つことが発見されました。(山中教授が発見)
 このように人工的に作った多能性幹細胞のことをiPS細胞と呼びます。iPS細胞は胚の滅失に関わる倫理問題もないうえ、患者自身の体細胞から作り出せば、拒絶反応の心配もないと考えられています。ただし腫瘍化の課題が完全に解決されていません。
ES細胞
 
 ヒトiPS細胞の樹立を発表するまで、再生医療研究のもっとも中心的な存在として注目された細胞。
  ・ESとは「Embryonic Stem Cell」の略。 「胚性幹細胞」と訳されます。
   胚の内部細胞塊を用いて作られる幹細胞で「万能細胞」とも呼ばれます。

  ・1981年に英国のエヴァンスがマウスES細胞を樹立したのがはじまりです。
  ・発生初期の胚の細胞からつくられるため、受精卵に非常に近い能力を持ち、体を構成するあらゆる細胞へと変わることができます。
  ・適切な環境さえ整えれば半永久的に維持することができるのが特徴です。
  ・維持培地から、各組織を培養する条件に近い環境へ移すと、その環境に応じてさまざまな細胞に分化していきます。


ES細胞の課題

①拒絶の問題
ES細胞は半永久的に維持でき、目的の細胞へと分化させられます。
➡再生医療のソースとして大きな期待が集まっています。
 しかし、ES細胞からつくられた細胞や臓器は移植される患者さんにとっては「他者」であり、臓器移植と同様に拒絶反応の対象となります。


②倫理問
ES細胞は「胚」を破壊しなければを造れません。元となる胚は、不妊治療の際に不要になった「余剰胚」から提供者に同意のもとで用いられています。
 胚を用いることに倫理上の違和感を持つ人も少なくなく、再生医療への応用も日本では長年禁止されていました。今後新たに作成するES細胞について再生医療に用いられる体制の整備が必要と考えられています。
iPS細胞

・体の細胞は全て一つの受精卵に由来しており、同一のゲノムを共通に持っています。
・しかし、各細胞においては必要な遺伝子以外の情報が読まれないようにゲノムにカギがかけられている。このため、血液が皮膚になったり、皮膚が心筋になることはありません。
・これまで細胞核を未受精卵へと移植するクローン作成技術やES細胞の融合実験から、卵子やES細胞にゲノムにかけられたカギをはずす「初期化」の能力があることが知られていました。
・山中教授らは、公開データベース情報にもとづいてES細胞や生殖細胞に特異的に発現する遺伝子を絞りこみ、遺伝子24個のセットをマウス線維芽細胞に組み込ませたところ、ES細胞と同等まで初期化された細胞を樹立することに成功しました。これが人工多能性幹細胞(Induced Pluripotent Stem Cell)、iPS細胞です。
この24個の遺伝子から必須の遺伝子を絞りこむ実験を行い、「Yamanaka Factor」と呼ばれている4遺伝子のセットに絞りこまれました。

・その後、樹立効率を上げるための導入法、別の因子の組み合わせでiPS細胞を樹立するなど、 様々なiPS細胞樹立方法が開発され、より再生医療に適した方法が何かが検討されています。
臨床研究においては、iPS細胞の品質管理(樹立方法を含む)について、国、研究機関、医療機関が綿密に協議する必要があります。
疾患特異的iPS細胞

・患者さんの皮膚や血液など、患者さん由来の組織からつくるiPS細胞を特に「疾患特異的iPS細胞」と呼びます。
・疾患特異的iPS細胞は患者さんの遺伝情報(病気を発症させる遺伝子も含む)を保有しているため、その病態を培養皿の中で再現することが可能です。
・そのため、希少疾患や神経難病など疾患の原因遺伝子が明確ではあるが患者数の少ない疾患、病変部位が脳内などサンプル採取の困難な疾患、もしくは病気の発生や進行が未知の疾患に対して大きな力を発揮します。
中でも、神経難病のひとつである神経変性疾患は、何らかの要因から神経細胞が徐々に変性しその機能を失う病気で、神経細胞が新たに生まれてくることはほとんどないため、病気が進行しその機能を失う前に治療を行うことが重要になります。

・医療の進歩により病態初期の兆候をとらえる技術は発展しつつあるが、その精度はいまだ充分でなく、根本的な治療法開発にはもっと早い段階での病態検出が必須です。
・疾患特異的iPS細胞では、生まれたばかりの神経細胞を作製することや病態が進行する様子を観察することが可能となり、従来の技術と比較して早期の状態で病態マーカーの検出が可能となることが期待されています。
・iPS細胞のこのような性質を活用した病態マーカーの探索はすでに実施されており、疾患特異的iPS細胞を用いた病態解明や新薬創出、新規治療法開発と組み合わせることで神経変性疾患の根本的な治療法開発が進められています。
・また、疾患特異的iPS細胞の老化を意図的に促進させ、より早く病気の兆しを観察する方法も研究されており、個別化医療や先制医療(将来かかりそうな病気を予測して予防的な治療を行う)に対するiPS細胞技術の応用も期待されています。

組織幹細胞・間葉系幹細胞(MSC)とは

組織幹細胞とは
各組織においてその維持再生に必要な細胞分化能を持つ幹細胞を指し、以下の二つの特徴をもっています。

血液、神経、骨、筋肉、血管などの細胞を造る ➔ 多分化能
欠損した細胞を維持再生・修復する      ➔ 自己複製能
臨床応用における多能性幹細胞と組織幹細胞の関係

多能性幹細胞は体の中のどのような細胞にもなる(分化する)ことができ、培養皿の中ではほぼ無限に増殖します。
・この性質は、臨床応用を考えた際の適用範囲の広さと供給量いう点で大変優れています。
・しかしこの細胞を動物にそのまま移植すると、いろいろな細胞に秩序なく分化してテラトーマという腫瘍を形成することが知られており、がん化のリスクが指摘されています。
・このため多能性幹細胞を細胞治療に用いる際には、体内での細胞運命の決定の秩序を参考にして、培養器の中で細胞を人為的に分化誘導し、それぞれの治療に必要とされる細胞を注意深く作製する必要があります。
・生体内において、幹細胞の分化は細胞外環境に大きく制御されます。そのため、培養器の中で多能性幹細胞を目的の細胞に分化させるには、生体内環境を再現するよう、培地の成分や培養時間などの培養環境を時空間的に操作制御することが必要となります。
組織幹細胞は特定の細胞種に分化する性質を持ちますが、培養皿中である程度しか増殖しません。
・治療効果を持つ組織幹細胞を体内から確実に採取でき十分量培養できる場合には、安全性の点では組織幹細胞による細胞療法が有望視されます。
・組織幹細胞を用いた治療法の中で既に安全性と有用性が確立されているのは血液腫瘍性疾患に対する造血幹細胞を移植する骨髄移植ですが、今後、脂肪由来の間葉系幹細胞療法の臨床応用が期待されます。
組織幹細胞>間葉系幹細胞
 

以下の幹細胞が様々な組織の中に含まれています。中でも脂肪組織における間葉系幹細胞が注目されています。

・造血幹細胞  - 骨髄
・衛星細胞   - 基底膜・筋鞘
・腸管幹細胞  - 小腸・大腸
・毛包幹細胞  - 毛包
・乳腺幹細胞  - 乳腺
・間葉系幹細胞 - 骨髄 脂肪組織 臍帯 胎盤 歯髄 滑膜・関節液
・神経幹細胞  - 神経
・内皮幹細胞  - 骨髄
・嗅粘膜幹細胞 - 嗅粘膜
・神経冠幹細胞 - 毛包
・精巣細胞   - 精巣
なぜ間葉系幹細胞(MSC: mesenchymal stem cell)が臨床面で注目されるのか

 ES細胞やiPS細胞と異なり一般的な幹細胞は人間の成長を支える細胞で、幼少期は大人よりたくさんの幹細胞が存在しています。
 成熟して見かけの成長がとまっても幹細胞は存在しており、一生を通して組織が損傷したときに細胞を補填する働きをもっています。これらの幹細胞は、組織幹細胞(成体幹細胞・体性幹細胞)と呼ばれています。中でも、骨髄などに存在する造血幹細胞は、半世紀以上前から研究され、臨床応用も活発に行われています。この造血幹細胞移植の治療法確立は、あらゆる組織幹細胞を利用する移植治療の可能性を広げました。
 しかし、組織によっては生体内から幹細胞を分離することが困難で、治療に用いることが難しいものもあります。例えば、脳や心臓などの組織幹細胞がそれにあたります。
 そこで注目されるのが
間葉系幹細胞です。間葉系幹細胞は

①発生過程で中胚葉から分化する脂肪や骨にすることができます。
②成人の骨髄、脂肪組織や歯髄などから比較的容易に得られます。
③中胚葉系の骨芽細胞、脂肪細胞、筋細胞、軟骨細胞などだけではなく内胚葉系の内臓組織や外胚葉系の神経などの細胞にも分化する能力を持っています。
④近年になって、免疫抑制作用を持つことや腫瘍に集積する性質があることも報告されました。


 ➡間葉系幹細胞を移植後の拒絶防止に利用する研究や、がんの遺伝子治療薬の運び屋として利用する研究も行われています。さらに間葉系幹細胞は、組織エンジニアリングという分野でも利用研究が進められています。

組織エンジニアリングの目標: 「①細胞②足場③栄養」を適切に組み合わせて3次元の人工臓器や組織を作り出す。


※間葉系幹細胞から分化させた細胞を利用した軟骨細胞シートによる軟骨損傷の治療はすでに行われており、健康保険の適用が認められています。脊髄損傷に対する点滴投与も条件付きで保険認可されました。
間葉系幹細胞(MSC)の治療効果の本態

MSCの疾患に対する治療効果は、特定の細胞に分化することではなく、パラクライン作用によって発揮されることがわかっています。

パラクライン作用

細胞の分泌物が大循環を介し遠方の細胞に作用するエンドクラインではなく、直接拡散などにより近隣の細胞に作用すること

例 
免疫系の制御  血管新生       抗炎症作用
   抗酸化作用   抗アポトーシス作用  組織修復作用


このパラクライン作用はMSCから分泌される様々なエクソソーム、サイトカインや増殖因子が関与していると考えられています。

※エクソソーム(Exosome)とは:細胞から分泌されるごく小型(直径 30-100nm程度)の小胞で、血液、尿、髄液などの殆どの体液に存在しています。内部には、microRNA、mRNA などの分子が含まれ、細胞間での情報伝達に重要な役割を担っています。再生医療のキーとなる間葉系幹細胞(MSC:Mensenchymal stem cell)は、種々のサイトカイン、成長因子に加えてこのエクソソームも分泌します。昨今の研究で、MSCの分泌するエクソソームが、さまざまな疾患に対して修復改善効果を発揮することが期待されています。
間葉系幹細胞>脂肪由来間葉系幹細胞

骨髄由来同様に脂肪由来間葉系幹細胞は高く注目されています。

なぜ脂肪由来間葉系幹細胞なのか
 
・骨髄由来同様に脂肪由来間葉系幹細胞は高く注目されています。
・ただし、骨髄細胞に比較して脂肪細胞は容易にかつ低侵襲に採取できるのが優位点です。
・さらに、骨髄由来間葉系幹細胞と同様の脂肪・骨・軟骨への分化能に加えて骨髄由来にはない筋分化能も持つことが示されています。
特にそれら全ての分化能を示した一部の細胞群は
ADSC(adipose derived stem cell)もしくはASCと名付けられます。
・そして、細胞形態や分化能は骨髄由来MSCと差異はありませんが、増殖能が強く、増殖に伴う老化の影響や骨分化能の低下が少ないのが特徴です。


なぜ静脈や動脈投与で効果があるのか

幹細胞には「ホーミング現象」により治療部位に集積する性質があります。そのため血液循環内に幹細胞を注入すると、所望の部位におのずと集積して治療効果を示すことがわかっています。

ホーミング現象:

末梢から移植された幹細胞がニッチ(反応部位)に到達する現象。
病変部からエクソソーム、サイトカインや接着因子などの誘導シグナルが供給され、幹細胞側では誘導シグナルを感受して病変部に集積していきます。 この双方のはたらきによりホーミングが成立するのです。

適応疾患と治療詳細

幹細胞の治療効果と適応疾患

間葉系幹細胞には、パラクライン効果と呼ばれる細胞の分泌物が直接拡散などにより近隣の細胞に作用する性質があり、免疫系の制御、血管新生、抗炎症作用、抗酸化作用、抗アポトーシス作用、組織修復作用など様々な再生修復作用が期待されます。また、幹細胞は障害部位や病巣を探し当てて自発的にその部位に集積するホーミングとよばれる能力も持っています。そのため、以下の治療効果が期待されます。脂肪幹細胞による治療は、従来の治療法と併用することができます。


適応疾患

1. 加齢に伴う身体的生理的機能低下
2. スポーツ外傷等による運動器障害
3. 動脈硬化症(心筋梗塞、脳卒中)
4. 慢性疼痛
5. 認知機能障害

6. 神経変性疾患
7. 慢性肺疾患
8. 心不全
9. 慢性腎臓病
10. 肝硬変、肝線維症などの肝機能障害
11. 炎症性腸疾患 
12. 動脈瘤
13. 糖尿病
14. 不妊症
15. 脱毛症
               加齢による身体的生理的機能低下
 
 
加齢による老化は様々な身体的生理機能低下を引き起こし、老化が主因となる疾患は数多く存在します。心臓や脳などの主要臓器の機能に関わる血管病、骨・筋肉・関節などの劣化が原因となるロコモティブシンドローム・サルコペニア・フレイル、光老化が主因となる皮膚・皮下組織の劣化、ひいては悪性新生物(癌)の発生など、言うまでもなく老化は心身の恒常性(ホメオスタシス)の破綻による生命機能全般の悪化を引き起こすのです。また、老化による機能低下や障害は複数の領域が同時に進行することがしばしばであるのに対して、日進月歩に進化する医療技術の極端な専門化は局所的な治療に偏りがちなことから、老化に対する俯瞰的かつ十分な医療の提供が不足がちであるという指摘もあります。万人が避けることの出来ない老化に伴う様々な機能低下を改善する治療は、高齢化社会である日本の喫緊の課題である健康寿命の伸長を実現するものとして強く期待されます。
 
治療の対象となるのは下記の疾患/病態にお悩みの方々です。
 

・加齢による身体的生理的機能低下の状態にあり、その改善や増悪予防を希望される方。具体的には以下の病態や症候のある方。

・加齢に伴う老化が原因となる身体的生理機能の低下及び障害
・脳卒中、心血管障害などの動脈硬化を背景にした疾患群
・活性酸素、フリーラジカルに対する抵抗力の低下
・活性酸素、フリーラジカルによる酸化障害の増加
・皮膚の光老化
・骨量低下
・筋肉量ないしは筋力の低下(サルコペニア)
・虚弱(フレイル)
       ポーツ・加齢による運動器障害
運動器は、身体活動を担う筋・骨格・神経系の総称であり、筋肉、腱、靭帯、骨、関節、神経(運動・感覚)、脈管系などの身体運動に関わるいろいろな組織・器官によって構成されます。それらの組織や器官が機能的に連合することによりヒトは生物としての生命活動を営むことが可能となります。社会の高齢化や多様化により、運動器の障害の発生は増加傾向にありますが、これにより、ロコモーティブシンドローム、サルコペニア、フレイルなど生活機能及び生活の質(QOL:Quality of Life)の著しい低下が惹起されることが問題視されています。現に、我が国の国民がもっとも多く抱えている身体的愁訴は運動器の障害や機能不全に由来しており、それにより要介護人口の増加、ひいては活動性低下に惹起される認知症の増加が見込まれることから、運動器障害への対策は社会的意義も極めて大きいと言えます。
 
療の対象となるのは下記の疾患/病態にお悩みの方々です。
 
 
・過度の外力負荷が短期間で発生するスポーツ外傷及び交通事故や相応の外力負荷が慢性的に持続する加齢により発生した軟骨・靭帯・筋肉などの運動器の障害を有し、既存の治療(保存治療、手術的治療)で改善しない、もしくは十分な回復が見込めない方。障害部位として、具体的には、以下の軟骨・靭帯・腱・神経・筋肉など運動器を構成する主要組織及び器官。
・肘、膝、肩、足、手、指、股関節の周囲の損傷
・脊髄損傷
・筋損
・靭帯損傷
・軟骨損傷
・腱損傷
・骨折後後遺症
 
下記のいずれかにする方。
・ロコモーティブシンドローム
・サルコペニア
・フレイル
       動脈硬化症
 国内の死因別死亡率の年次推移を見ると、悪性新生物(がん)が最も多いですが、動脈硬化症を背景にした心臓血管疾患と脳血管疾患を合わせると悪性新生物とほぼ同等になります。
 動脈硬化症は、高血圧や糖尿病などにより動脈の内側の膜(内膜)にある内皮細胞に傷がつくことが発症契機になります。内皮細胞に傷がつくと、血液中の酸化した悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が内膜に入り込み、酸化を受けて酸化LDLコレステロールに変化します。それを処理するために白血球の一種である単球も内膜へと入り込み、マクロファージに変わります。マクロファージは酸化LDLコレステロールを取り込んで、やがて死んでいきます。この結果、内膜に、LDLコレステロールに含まれていた脂肪分が、お粥のような柔らかい沈着物となってたまっていき、内膜はどんどん厚くなります。このようにしてできた血管のコブをプラーク(粥腫)と言い、プラークができた状態を粥状(アテローム)動脈硬化と言います。プラークができると、血流が悪くなり、血管が少し収縮しただけで血流がとだえて、その血管により酸素や栄養が送られている心臓や脳に症状が起こります。また、炎症などがきっかけでプラークが破れると、そこに血のかたまり(血栓)ができて血流が完全に途絶え、心筋梗塞や脳梗塞が起こります。
 このように動脈硬化症が原因となる心筋梗塞
や脳卒中が、がんと最も異なる点は突然死を来し得ることです。がんの中でも急激に進行するケースもありますが、突然命を落とすという事態はまず発生しません。一方、心筋梗塞や脳卒中は、つい先ほどまでいつもと変わりなく日常生活をしていた方が突然発症して急死すると言うことが度々見受けられます。また、急死と言う最悪の事態は免れても、発症してから治療まである一定の時間(3-6時間)を越してしまうと
①重症化が余儀なくされてQOLを著しく下げるような大きな後遺症が残る
②結局は命を落とす

など取り返しのつかないことになることが多く、極めて厄介な疾患群です。このような危機的な状況にならないようにするために最も重要なのは、動脈硬化症を
進展させないことです。それにより心筋梗塞や脳卒中の発症、再発を防ぐことが可能になります。動脈硬化症の進展を抑えて致死的な疾患の発症を予防することが治療の目標になります。
 
療の対象となるのは下記疾患/病態にお悩みの方々です。
 
 

・下記選択基準のいずれかを満たし、動脈硬化性病変を有すると判断される方。
 

・CAVI値(心臓足首血管指数)≧8.0

・ABI値(足関節上腕血圧比)≦0.9

・頸動脈エコー検査で頸動脈(総頚動脈、内頚動脈)にプラーク(IMT≧1.1)を有する
 

・以下のいずれかに該当する方。
 

・心筋梗塞、狭心症の既往がある

・冠動脈CT検査で冠動脈壁不整、石灰化、狭窄、閉塞所見を有す

・脳梗塞の既往がある

・頭部MRI、MRA検査で脳梗塞巣が指摘される

・二親等内の血縁者に動脈硬化性疾患を有する方が2名以上いる

・遺伝子検査で動脈硬化の素因が高いと判断された
 

・以下の疾患をお持ちで、既存治療(保存的治療、手術的治療)だけでは症状の改善が不十分な方。
 

・脳梗塞
・心筋梗塞

・閉塞性動脈硬化症

・バージャー病

       慢性疼痛
  慢性疼痛は国際疼痛学会(IASP)で「治療に要すると期待される時間の枠を超えて持続する痛み、あるいは進行性の非がん性疼痛に基づく痛み」と定義されています。本邦での正確な定義はありませんが、発症からおおむね3か月を超えて症状が持続する病態を一般的に指します。痛みの要因別分類では侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、心理社会的疼痛などがありますが、慢性化すると痛みの要因はどれか一つに起因することは少なく、種々の要因が複雑に絡んだ混合性疼痛になっていることが多いようです。心理社会的要因が強くなればなるほど治療に難渋すると言われています。そして慢性疼痛の患者さんでは抑うつ症状がみられることが多く、疼痛が長引くと、心理社会的要因との循環的相互作用により難治化、重症化することがわかっています。
 疼痛の長期化により、仕事や学業への悪影響が見られ、高率で失職や退学、休職や休学、もしくは転職を認めることが報告されています。また、失職などにより社会活動性が低下し、家庭内での存在感の低下や経済的ストレスが自己価値観の低下につながることがあります。健康に関連するQOLが著しく低下することが問題視されています。
 
療の対象となるのは下記疾患/病態にお悩みの方々です。
 
 
・体の内側・外側に関わらず、慢性的に以下のような痛みの症状がある方。
・古傷が痛む
・頭痛や顔面痛がある
・骨や筋肉が痛む
・がんの治療中で痛みがある
・神経障害での痛みがある
・内臓や血管が原因の痛みがある

・X線,CT,MRI,超音波検査などで関節の変形があり、以下の症状がある方。
・関節を使うと痛みが出る
・体を一定時間動かさずに休めていると関節が固くなる
・湿っぽい天気の日に痛みが強くなる
・痛みが持続している、あるいは再発する
・運動中や運動後に関節が痛む
・思いどおりに動かせなくなった
・薬や杖を使用するだけでは痛みを十分に和らげることができない
・痛みのためによく眠れない
・関節の動きが悪くなっている、あるいは曲げられる角度が小さくなったように感じる
・関節が固くなっている、あるいは腫れている
・歩いたり階段を上ったりするのが困難になった
・椅子に座る、椅子から立つ、浴槽に入る、浴槽から出るなどの動作が困難になった
・朝に関節がこわばり、その内に治まる
・関節がきしむような感じがする
・過去に膝の前十字靱帯に外傷を負ったことがある
・以下の疾患をお持ちで、既存治療(保存的治療、手術的治療)だけでは症状の改善が不十分な方。
・変形性膝関節症
・腰椎症
・頚椎症
・慢性疼痛症
       認知機能障害
   認知機能障害は「記憶、遂行、注意、言語、視空間認知などの認知機能領域における障害」であり、認知症とは「認知機能障害が進行し、一旦正常に発達した種々の精神機能が慢性的に減退・消失することで日常生活や社会生活を営めない状態」を言います。認知症の初期段階は軽度認知機能障害と呼ばれ、軽度認知機能障害の状態から徐々に認知症が完成されることがわかっています。認知症は、記憶能力や学習能力が低下し、老人斑や神経原線維変化および広範囲の炎症を認めることが多く、根本的な治療方法が確立されていない難治性疾患の一つです。高齢者人口の急増と共に認知症患者数は増加しており、2020年には325万人に達するとみなされています。
 現在、認知症に対する他の治療法として、ガランタミン、メマンチン、リバスチグミン、メマンチン併用ドネペジルなどを用いた薬物療法が挙げられます。しかしながら、これらの薬物の服用による認知症の進行を抑制する効果は認められているものの、根本的に症状を改善することはできません。臨床的に有効な治療薬としての改善効果は得られていないのが現状です。また、軽度認知機能障害の状態において症状の進行を抑えることができれば、認知症の発症を遅らせるか予防することに繋がると言えます。
 
療の対象となるのは下記疾患/病態にお悩みの方々です。
 
 
・知っている物や、身近な人物の名前が思い出せない
・「あれ」や「それ」などの代名詞を使って会話をすることが増える
・妻、夫、息子、娘、孫などの身近な人物の名前が思い出せなくなる
・物を置き忘れたり、しまい忘れたりすることが多くなる
・買い物から帰ってきて、置いた荷物をそのまま放っておいてしまう
・水道やガス栓を閉め忘れる
・財布や鍵を、どこに置いたか思い出せない
・同じ話を何度も繰り返す
・同じ質問を何度もしたりする
・何をするのも億劫な気分になり、身嗜み(みだしなみ)にも構わなくなる
・いままで好きだった物に対する興味や関心がなくなる
・やる気がなくなり、趣味で通っていた習い事などにも行く気がしなくなる
・ぼんやりとしていることが多くなる。身嗜みを整えることをしなくなる
・会話についていけなくなる
・相手の表情や感情を読み取ることができなくなる
・相手が何を話しているのか、会話の内容がわからなくなる
・複数人で会話をしているときに、話の意味がわからなくなる
・予定を忘れる
・手帳を見ないと予定がわからなくなる
・約束の時間に遅れたり、日にちを間違えたりする
・予定を忘れたことに気づかない
・最近の出来事が思い出せない
・数日前に家族で出かけたことを忘れる
・数時間前に食事をしたことを忘れる
・かかってきた電話に応対して切った直後に、電話がかかってきたことを忘れる
・道に迷う
・いつも通っているはずの道なのに、自分のいる場所がわからなくなる
・よく知っている道のはずなのに、見知らぬ場所に思えて道順がわからなくなる
・歩いている途中で、どこに向かっていたのかを思い出せなくなる
・以下の疾患をお持ちで、既存治療(保存的治療、手術的治療)だけでは症状の改善が不十分な方。
・軽度認知機能障害
・アルツハイマー病
・レビー小体型認知症
・血管性認知症
       神経変性疾患
    パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、レビー小体型認知症などの神経変性疾患は、潜在的に発症し、緩徐ですが常に進行する神経症状を呈し、血管障害、感染、中毒などのような明らかな原因がつかめない一群の疾患であり、治療方針が未確定で、経過が慢性にわたる難病です。そのために、単に経済的な負担のみならず、介護等に相応の人手を要することから身体的精神的にも家族を主とした社会の負担が大きい疾病と言え、合理的な管理が可能となる治療法の台頭が切望されます。
 
療の対象となるのは下記患/病態にお悩みの方々です。
 
 
・特有の領域の神経系統が侵され、神経細胞を中心とする様々な退行性変化を呈する疾患群であるパーキンソン病・筋萎縮性側索硬化症・脊髄性筋萎縮症・重症筋無力症・大脳皮質基底核変性症・多発性硬化症・多系統萎縮症・脊髄小脳変性症などの神経変性疾患を患っている方。
・以下の疾患をお持ちで、既存治療(保存的治療、手術的治療)だけでは症状の改善が不十分な方。
・筋萎縮性側索硬化症
・脊髄性筋萎縮症
・パーキンソン病
・大脳皮質基底核変性症
・重症筋無力症
・多発性硬化症
・多系統萎縮症
・脊髄小脳変性症
       慢性肺疾患
    特発性間質性肺炎、特発性肺線維症、慢性閉塞性呼吸障害などの慢性肺疾患は、代表的な指定難病群であり、既存の治療で完全にコントロールできていません。慢性的な呼吸苦は、生命活動を営む上でこの上ない障害でありQOLを著しく低下させます。慢性肺疾患群は、風邪などの上気道炎を契機に急性増悪することもしばしばあり、徐々に増悪して不可逆的変化を来し、呼吸不全に陥ることがしばしば認められます。例えば特発性肺線維症は、確定診断後平均生存期間は28~52か月程度であるという報告もあります。
 
療の対象となるのは下記患/病態にお悩みの方々です。
 
 
・間質性肺炎、肺繊維症、閉塞性細気管支炎、閉塞性肺疾患などの難治性慢性肺疾患に罹患しており、既存の治療で十分なコントロールが得られていない方。 または、以下のいずれかの症状を呈し、QOLの低下を招いている方。
・坂道や階段昇降時などの労作時に息切れを自覚する。
・反復性、持続性に呼吸苦を自覚する
・動脈血酸素分圧が低下している(例:PaO2≦60Torr)
・以下の疾患をお持ちで、既存治療(保存的治療、手術的治療)だけでは症状の改善が不十分な方。
・特発性間質性肺炎
・肺線維症
・慢性閉塞性呼吸障害などの慢性肺疾患
       心不全
心不全はいったん発症すると、徐々に増悪することが問題視されており、心不全全体の年間死亡率は7~8%で、NYHA分類のⅢ度では20~30%になると言われています。特に高齢者の方は、心不全を起こして入院するたびに全身状態が1段階ずつ低下し、入院前の状態にまで回復することなく、慢性的に心不全を繰り返すようになります。しかし、根本的な治療法がなく、既存治療は対症療法以上のものでしかありません。
 
NYHA分類(ニューヨーク心臓協会:New York Heart Associationの分類)Ⅰ度:心疾患はあるが、身体活動を制限する必要がない。日常の生活活動で疲労、心悸亢進、息切れ、狭心症状などが生じない。Ⅱ度:心疾患はあるが安静時には無症状。日常的な身体活動では疲労、心悸亢進、呼吸促迫、狭心症状が生じる。軽度の身体活動制限が必要。Ⅲ度:日常生活活動を軽度に制限しても疲労、心悸亢進、呼吸促迫、狭心症状等が出現する。中等度ないし高度の身体活動制限を要する。Ⅳ度:高度の運動制限をしても心不全や狭心症が起こる。少しでも身体活動を行うと症状が増悪する。
療の対象となるのは下記患/病態にお悩みの方々です。
 
 
・慢性の心筋障害により心臓のポンプ機能が低下し、末梢主要臓器の酸素需要量に見合うだけの血液量を絶対的にまた相対的に拍出できない状態であり、肺、体静脈系または両系にうっ血を来し日常生活に障害を生じた病態にある。

・ 労作時呼吸困難、息切れ、尿量減少、四肢の浮腫、肝腫大等の症状の出現によりQOLの低下が生じ、日常生活が著しく障害されている。

・以下の、大症状2つか、大症状1つおよび小症状2つ以上を持つ方。
[大症状]
・発作性夜間呼吸困難または起座呼吸
・頸静脈怒張
・肺ラ音
・心拡大
・急性肺水腫
・拡張早期性ギャロップ( III 音)
・静脈圧上昇(16cmH2O以上)
・循環時間延長(25秒以上)
・肝頸静脈逆流
[小症状]
・下腿浮腫
・夜間咳嗽
・労作性呼吸困難
・肝腫大
・胸水貯留
・肺活量減少(最大量の1/3以下)
・頻脈(120/分以上)
       慢性腎臓病
    IgA腎症、多発性嚢胞腎、ネフローゼ症候群などの慢性腎疾患は、指定難病であり、既存の治療で完全なコントロールが困難です。現状では対症療法が主となり根治的な治療法は確立されていません。病状は徐々に進行し腎不全を招来することが多々あります。日常的な透析を余儀なくされることは、QOLの低下と人生における活動期間の著しい短縮を余儀なくされ、経済的側面においても大きな負担となっています。
 
療の対象となるのは下記患/病態にお悩みの方々です。
 
 
・以下のいずれかの条件に該当する方。
・GFR < 60ml/分/1.73m2
・反復性、持続性に呼吸苦を自覚する
・0.15g/gCr以上のタンパク尿(30mg/gCr以上のアルブミン尿)
・以下の疾患をお持ちで、既存治療(保存的治療、手術的治療)だけでは症状の改善が不十分な方。
・IgA腎症
・多発性嚢胞腎
・ネフローゼ症候群などの慢性腎疾患
       肝硬変・肝線維症など肝機能障害
   ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪肝炎などが慢性化すると、肝臓の線維化が生じ、さらに症状が進行すると、非可逆的な病態である肝硬変に進展する。肝硬変に陥ると、いずれ肝不全ないしは肝臓癌という致死的な転機をたどることになります。肝臓の線維化が相応に進むと根本的な治療は不可能となり、肝硬変に対しては肝移植以外に根治的な治療法が存在しません。一方、肝臓移植は、移植が望まれるタイミングで円滑な臓器提供を受けることは容易ではなく、移植に代わる医療技術の開発が望まれています。
 
療の対象となるのは下記患/病態にお悩みの方々です。
 
 
・各種原因により、慢性肝疾患が進展し、肝臓全体に線維化と線維化に伴う結節形成が認められる状態にある方。
・肝機能障害と肝予備能低下を認め、腹部エコー、腹部造影CT、MRIなどの画像検査で肝硬変に特異的な形態異常を認める方。
・血液検査で以下の項目などにおいて肝機能障害に典型的な異常を認める方。

 
・アルブミン値
・プロトロンビン時間
・総ビリルビン値
・血小板値
・AST(GOT)値
・ALT(GPT)値
・γGTP値
・Alp値
・アンモニア値
・以下の疾患をお持ちで、既存治療(保存的治療、手術的治療)だけでは症状の改善が不十分な方。
・肝硬変
・肝線維症
・慢性肝炎
       炎症性腸疾患
   炎症性腸疾患は、ヒトの免疫機構が異常をきたし、自らの免疫細胞が自らの腸の細胞を攻撃してしまうことで腸に炎症を起こす病気で、患者さんは慢性的な下痢や血便、腹痛などの症状を伴います。 潰瘍性大腸炎とクローン病の2つが代表的な炎症性腸疾患で、両疾患とも比較的若い方にも発症しやすく、難治性であり、日本での発症数は年々増加傾向にあることから、有効な治療法の台頭が切望されます。本治療は、患者さんの自己脂肪由来間葉系幹細胞を、体外で数多く培養した後、体内に戻すことで様々な治療効果を期待するものです。幹細胞は、障害部位を探し当てて自発的にその部位に集積するホーミングとよばれる能力を持っています。そのために、障害部の炎症が抑えられ、変性した消化管粘膜の修復や再生を促すことがわかっています。 それにより症状の改善が期待されます。 炎症性腸疾患に対する新たな治療として、単独で用いられるだけでなく、従来の治療法と併用することも可能です。
 
療の対象となるのは下記患/病態にお悩みの方々です。
 
 
・潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患に罹患しており、症状の改善や増悪予防を希望する方。
 
・潰瘍性大腸炎
・クローン病 小腸型
・クローン病 大腸型
・クローン病 小腸大腸型
・腸管ベーチェット
       動脈瘤
   動脈瘤は、アテローム性動脈硬化症を背景とした動脈壁の構造破綻、炎症、遺伝性結合性組織障害などを原因として、動脈壁が菲薄化し動脈内腔が拡張する疾患です。増悪すると激しい疼痛を発症し、放置し続けると破裂リスクが大きくなります。破裂するとしばしば致死的となり、救命し得たとしても重篤な後遺症が残ることが殆どです。また、動脈瘤の内部に発生した血栓が飛散して、脳梗塞、腎障害、下肢の急性血流障害を惹起することがあります。破裂や血栓形成を来さないようにするには動脈瘤径の拡大を抑えることが重要と言えます。動脈瘤の進展には血管壁の炎症及び結合織の破綻が認められ、脂肪由来間葉系幹細胞移植により動脈瘤拡大が抑止された研究成果は複数報告されており、種々の動脈瘤患者さんに対して、脂肪由来間葉系幹細胞の治療は臨床上極めて有望なものとなる可能性があります。
 
療の対象となるのは下記患/病態にお悩みの方々です。
 
 
・脳動脈瘤
・腹部大動脈瘤
・胸部大動脈瘤
・その他の動脈瘤
など主要動脈等に瘤形成が指摘され、病状の増悪予防を希望する方。
       糖尿病
   糖尿病は、インスリンの作用不足により高血糖が慢性的に続く病気であり、国内では疑い例を含めると成人の6人に1人が発症します。自覚症状のないままに病状が悪化し、知らぬ間に重篤な合併症に進展することが少なくありません。微小な血管の障害である網膜症・腎症・神経障害の三大合併症のほか、より大きな血管の動脈硬化が進行すると心臓病や脳卒中の発症を来し、しばしば難治性です。日本での発症数は年々増加傾向にあることから、有効な治療法の台頭が切望されます。脂肪由来間葉系幹細胞移植により膵臓外分泌能やインスリン感受性が改善を認めた研究成果は複数報告されており、臨床上極めて有望なものとなる可能性があります。
 
療の対象となるのは下記患/病態にお悩みの方々です。
 
 
・糖尿病と診断され、既存治療(保存的治療、手術的治療)で症状の改善が不十分な方。
・下記のいずれかに該当する方。

 
・早朝空腹時血糖が126㎎/dl 以上
・75gOGTTが200mg/dl 以上
・随時血糖値が200mg/dl 以上
・HbA1cが6.5% 以上
       不妊症
   不妊症とは、妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、一定期間(一年以上)妊娠しないものと定義されます。また、女性に排卵がなかったり、子宮内膜症を合併していたり、過去に骨盤腹膜炎などにかかったことがあったりすると妊娠しにくいことも分かっています。さらに、男女とも加齢により妊娠が起こりにくくなることから、治療時期を逸失することにより不妊症の改善はますます困難なものになります。近年、妊娠を考える年齢が上昇していることから、10組に1組以上のカップルが不妊に悩み、治療に難渋しているとされ、幹細胞治療などの低侵襲で効果的な治療法の開拓が切望されています。卵巣因子、卵管因子、子宮因子、免疫因子などによる不妊症が脂肪由来間葉系幹細胞移植により改善を認めた研究成果は複数報告されており、種々の不妊症に対して、脂肪由来間葉系幹細胞の治療は臨床上極めて有望なものとなる可能性があります。
 
療の対象となるのは下記患/病態にお悩みの方々です。
 
 
・卵巣機能の低下、子宮内膜の増殖機能の低下、免疫変調、加齢などが原因の不妊症の方。
・下記のいずれかに該当する方。
・原発性卵巣機能不全
・多嚢胞性卵巣不全
・卵管閉塞
・子宮内膜症
・アッシャーマン症候群
       脱毛症
   脱毛症は、日本人男性の場合には 20 歳代後半から30 歳代から発生し、徐々に進行して 40 歳代以後に完成されます。男性型脱毛症の日本人男性の発症頻度は全年齢平均で約 30%と報告され、年代別発症頻度は,20 代で約 10%、30 代で 20%、40 代で 30%、50 代以降で 40 数%と年齢とともに高くなります。男性型脱毛症の発症には遺伝と男性ホルモンが関与しますが、 遺伝的背景としては X 染色体上に存在する男性ホルモンレセプター遺伝子の多型や常染色体の 17q21 や 20p11 に疾患関連遺伝子の存在が知られています。 一方、女性では男性と異なり,頭頂部の比較的広い範囲の頭髪が薄くなるパターンとして観察されます。発症時期についても男性とは異なり、更年期に多発するようになります。また男性ホルモン依存性では 病態が説明できない場合も有り、現在では男性型脱毛症より「女性型脱毛症(female pattern hair loss)」 という病名を用いることが国際的にも多くなっています。男性型脱毛症も女性型脱毛症も生理的な現象ではありますが、外見上の印象を大きく左右するので QOL(Quality of life)に与える影響は大きいと言えます。近年、男性型脱毛症の病態解明が進むとともに、有効な外用・内服の治療薬が開発され、皮膚科診療においても積極的に使用されるようになってきました。しかし、脱毛症の治療は確立されておらず、無効といえる科学的根拠に基づかない民間療法が社会的に横行し、無効な治療法を漫然と続ける患者さんも少なくありません。有効な治療法の台頭が切望されます。脂肪由来間葉系幹細胞移植により、髪の毛の太さ、密度において劇的な改善を認めた研究成果は複数報告されており、脂肪由来間葉系幹細胞の治療は臨床上極めて有望なものとなる可能性があります。
 
療の対象となるのは下記患/病態にお悩みの方々です。

 
・男性型脱毛症(AGA)
・女性型脱毛症

脂肪幹細胞治療の妥当性

慢性疼痛治療としての妥当性
脂肪由来間葉系幹細胞(MSC)は、
TGF-β、IL-1βなどの炎症性サイトカインを調節し、抗炎症性サイトカインであるIL-10を分泌する能力があります。
血管新生、シナプス産生、神経膠形成、神経発生などの能力も併せ持つため疼痛受容体の修復や調節が可能と考えられます。
動脈硬化治療としての妥当性
脂肪由来幹細胞が持つ血管新生効果は、in vitro及びin vivoに限らず臨床研究においても確認されており、虚血性心疾患、脳血行障害、抹消循環障害、そして創傷治癒に対する治療として有望視されます。
脂肪由来幹細胞から放出される微細粒子であるエクソソームから放出されるサイトカイン群が、虚血性病変に対する治療効果があると考えられています。
脂肪幹細胞の血中投与により、動脈プラーク内、心筋内の炎症が制御されることが確認されています。
認知機能障害治療としての妥当性
脂肪由来間葉系幹細胞(MSC)は、血管新生、シナプス産生、神経膠形成、神経発生などの能力を持つばかりか NGF、BDNF、GDNF、VEGF、HGF、IGF1、SDF-1、CXCR4、 そしてシナプス小胞タンパクなど、多様な神経細胞及びグリア細胞関連タンパクを分泌します。また、様々な細胞に分化する能力を有するため、神経変性疾患に対して有力な治療源になることが期待されます。
アルツハイマー病の病理学的な定義は、アミロイドβペプチドの脳内蓄積。一方、ネプリライシンは脳にあるアミロイドβ分解酵素でアミロイドβを処理することができ、脂肪由来間葉系幹細胞にはネプリライシンの活性型を分泌する能力があります。
その他治療の妥当性
間葉系幹細胞(MSC)は、血管新生、シナプス産生、神経膠形成、神経発生などの能力を持つばかりかNGF、BDNF、GDNF、VEGF、HGF、IGF1、SDF-1、CXCR4、そしてシナプス小胞タンパクなど多様な神経細胞及びグリア細胞関連タンパクを分泌します。さらに、脂肪由来間葉系幹細胞は、TGF-β、IL-1βなどの炎症性サイトカインを調節し、抗炎症性サイトカインであるIL-10を分泌するなど、免疫調節機能を持つとされています。
脂肪由来間葉系幹細胞のパラクライン効果が様々な病状回復に機能することが考えられ、スポーツ・加齢による運動器障害、加齢による身体的生理的機能低下神経変性疾患、慢性肺疾患、心不全、慢性腎臓病、肝硬変・肝繊維症など肝機能障害、炎症性腸疾患に対して、脂肪由来間葉系幹細胞関連の治療は臨床上極めて有望なものとなる可能性があります。
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